岡山地方裁判所 昭和24年(行モ)10号 決定
被申立人の定めた別紙目録記載の農地に対する農地買收計画の執行は本件当事者間の岡山地方裁判所昭和二十四年(行)第三八号農地買收不服訴訟事件の裁判確定に至る迄停止する。
三、事 実
申立代理人は、その理由として、別紙目録記載の農地は申立人の所有に属するものであるが、申立人が朝鮮に在住中小作に付していたところ、右小作人等は昭和二十三年八月三十一日申立人が不在地主であるとして遡及買收方の請求をなした。しかしながら申立人は昭和二十年十月朝鮮の住所を引拂い申立人を除く家族全員は同月中川面村の自宅に帰來し同村内の田畑二反六畝の自作を開始したが、申立人のみは進駐軍に抑留せられた爲昭和二十一年三月に至つて帰宅したもので遡及買收基準日たる昭和二十年十一月二十三日現在に於いて申立人は不在地主とはいえない訳である。しかして被申立人委員会は一旦右同理由で前記小作人等の申請を却下したが、小作人等は更に岡山縣農地委員会に対し訴願し、同委員会は申立人を基準日において不在地主であるとなし本件農地に付き買收手続をなすを相当と認める旨決定し、被申立人委員会は右決定に從い昭和二十四年六月本件農地に付き買收計画を定めたので、申立人は右買收計画に付き同委員会に対し異議を申立てたが棄却され、更に岡山縣農地委員会に対し訴願をなしたがこれまた却下され、右裁決書は同年八月二十六日交付された。
申立人は前記の委く基準日に川面村に居住していたに拘わらず之を誤認して不在地主であるとして行つた本件買收計画は違法であるのでその取消を求める爲岡山地方裁判所昭和二十四年(行)第三八号を以て訴を提起しているが、被申立人委員会の本件買收計画書類は岡山縣農地委員会に提出せられ近日中に承認を受ける状勢にあるので、一旦右承認を受けると申立人は眞の所有権を喪失し償うことの出來ない損害を被る虞があるので右計画の一時的執行停止を求める爲本申立に及んだものであると述べた。
四、理 由
按ずるに行政廳の違法な処分の執行停止を命ずるには行政事件訴訟特例法第十條第二項に規定してある如く当該処分の執行に因り生ずべき償うことの出來ない損害を避ける爲緊急の必要がある場合であることを要する。本件農地買收計画に付いて考察するに仮令計画通り農地の買收が遂行されたとしても元來土地が滅失して回復不能となる虞はなく、又手続が進行して農地の移轉登記がなされたとするも申立人の本案訴訟の勝訴確定判決あるときは同法第十二條により関係行政廳は拘束される結果原状回復が可能であり又その間の耕作不能による損害は金銭で償うことが出來るものと認められるので結局本件申立は前記執行停止の要件を具備しておらずこの点において申立は許容出來ないものと認め申立を却下すべきものとし、申立費用に付いては同法第一條民事訴訟法第九十五條第八十九條を適用した上主文の通り決定する。
(裁判官 中島貢 菅納新太郎 辻川利正)
(目録省略)